Hitorigoto

2010年12月5日。娘の３歳の誕生日。



おじいちゃん・おばあちゃんからのプレゼントに喜んでいる娘。
ほほえましい光景。

その表情は、あの日から３年たった事を意味している。

（今回長文です。お時間のある方ﾄﾞｿﾞ）

2007年12月4日。

定期検診にて胎児の発達が遅く、大学病院で一度診察することになった。
（この時点で妊娠30週）
大学病院での診断結果としては、
地元の病院からの診療情報提供書記述内容とは状況がまるで異なる。
即入院し経過観察が必要との事であった。

ずっと検診には行っていなかったのかと質問を受けるが、
妊娠がわかってから毎月検診をちゃんと受けていたことを説明する。
なぜ今まで大学病院を受診させなかったのかと、不思議がる医師。
そして不安がよぎる僕達夫婦。

しかし大学病院ではベッドに空きが無く、市立病院へ依頼する。
だが市立病院も空きが無く、受け入れ可能な病院をあたったところ、
可能との返答をもらった病院が見つかったので、
そこを再度受診して欲しいとの事であった。

その足で受診をした結果、
やはり即入院が必要との事で妻はそのまま入院。
胎盤に血栓が出来ており、それが原因となって胎児へ十分な栄養・酸素が供給されない状態と考えられると説明を受ける。

この時点で、僕は緊急手術になる予感がしていた。
職場の上司へ連絡し、翌日の有休申請を相談した。

実はこの時期、職場は忙しい時期であった。
出勤朝７時、退勤深夜１時とか当たり前であった。
にもかかわらず、即断で休めと言ってくれた上司には、
今でも感謝をしている。


翌朝、自宅にいた僕の携帯が鳴る。妻からだった。
予想通り緊急手術となるとのこと。
今すぐにでも手術を開始したいが、僕がすぐ病院に来れるようであれば多少は待ってくれるとの事だった。
すぐに病院に駆けつける。
自宅から病院までは車で40分ほどの距離だが、本当に長く感じたことを覚えている。

妻はだれでもそうかもしれないが、強さと弱さが同居している。
こんなときは、絶対に不安で仕方の無いことは予測できた為、
病室に入ったとき、僕はあえて満面の笑顔でこう言った。
「なんだ、へんちくりんな顔して」

手術室への搬送と同時に、手術の同意書への記載を依頼される。
そこに僕は「緊急の際は、妻の生命を最優先して欲しい」と記載した。
その記載が正しかったのか間違っていたのか、今でも答えは無い。


３時間の手術を終え、生まれてきた娘。

出生時体重、622ｇ。

１キロにも満たない、手のひらで支えることができる、命。



その後、娘はNICU（乳児専門集中治療室）へ。
NICUには経管栄養・気管切開などの治療を受けている乳児が沢山いた。
これが、乳児医療の現場。
そして、遠い世界ではなく目の前にある、現実。

幸いなことに、未熟児網膜症や肺疾患など未熟児に多く見られる疾病は発症せず、娘は４ヶ月後に退院となった。
今でもフォローアップ外来といって、定期的に病院には通っているが、
今のところ大きな病気や障害は見つかっていない。
無論、今後発見される可能性は他の子よりも高い事も事実であるが・・。

偶然だがこの病院、僕と妻も生まれた病院である。
何かの縁を感じずにはいられない。

体格はやはり同世代の子と比べると非常に小さい。
年明けに検査を行い、適応できるか検討することとなっているが、
成長ホルモンの注射を行い、人為的に成長を促進させることになると思う。
健やかな成長を、心から願っている。


超未熟児の親であるということはどういうことか。

おそらく、「ただの親」なんだろうと思う。
笑って、泣いて、心配して、期待して、比較して、がっかりして、出かけて、叱って、褒める、ただの親なんだろうと思う。


だから、１２月５日は僕にとって

３年前に生まれた娘に、「おめでとう」を
３年分の妻の涙に、「ありがとう」を

伝える日でもある。


もろくて弱い父であり夫だけれど、

これからも

よろしく、ね。




来年はキャンプ行こうね。